【ポジティブ・アクション】女性だけを募集する方法とは?
通常、求人募集や採用活動において
男女で異なる扱いをすることは
『男女雇用機会均等法』により禁じられています。
しかし、「ポジティブ・アクション」の募集を行うことで
女性訴求が可能になる例があります。
この記事では、女性活用の推進と
求人広告におけるポジティブ・アクション募集の
方法をまとめています。
女性活躍推進法
2015年に施行された女性活躍推進法とは
家事や育児・介護によって、
働きたくても働けない女性を減らすことを目的としており
女性に対する採用・昇進等の機会の積極的な提供および
その活用を推進するよう企業に義務付けた法律になります。
※常時雇用する労働者が300名以下の企業は努力義務
少子高齢化が進み、労働人口は総人口を上回るペースで減少しています。
その中で、女性・高齢者・外国人労働者の活用などが推進され
特に女性については、雇用機会均等法の浸透や
女性活躍推進法などの取り組みにより「働く意欲」が増しています。
しかし、女性の労働力が必要であるにも関わらず
日本ではまだまだ女性が働きたいと思っても働けない状況にあります。
その理由として
・育児や介護に時間がとられ働く時間がつくれない
・育児にひと段落し、正社員として働きたいが募集が少ない
・キャリアアップをして管理職になりたいが、前例がなく難しい
といったことが挙げられます。
労働人口を増やし、多様性に富んだ社会にするために
女性の活躍推進は企業にとっても重要なテーマとなります。
【具体的な推進例】
女性が管理職になることへの支援として
◎女性管理職と女性社員の座談会の開催
◎若手社員や中堅社員に向けたスキルアップセミナーの開催
◎周囲の理解やサポートが得られるような職場環境の整備
など。
ポジティブ・アクションとは
「ポジティブ・アクション」とは、
「営業職は男性・事務職は女性」というような
固定的な性別による役割分担意識や、
過去の経緯から「管理職の大半を男性が占めている」
など、社内制度には男女差別的取扱いはないのに
男女労働者の間に差が生じている場合に
実質的な男女均等の取扱いを実現するためのものです。
単に女性だからという理由だけで
女性を「優遇」するのではなく、
”女性の職域が広がらない”、
”女性の能力が十分に活かされていない”といった
企業の課題を解決するために必要なものとされています。
◇目的
世界的に女性の社会進出が進む中で、日本の現状はなんと153ヶ国中121位…
日本では現在も「男は仕事、女は家事」といったような
固定的な性別役割分担意識に関する偏見が
根強く残っている場合もあり、
各分野における「指導的地位」等に占める女性の割合は
他の先進諸国と比べて低い水準となっています。
そこで各企業が男女労働者間の格差を解消することを目的に
ポジティブ・アクションを取り入れています。
◇メリット
ポジティブ・アクションには個々の労働者に対してはもちろん
企業にもさまざまなメリットがあります。
★労働者にとってのメリット
・ライフイベントと両立しながら長く活躍できる
★企業にとってのメリット
・新規の女性社員の採用力アップ
少子化により労働人口が減少している日本において、
性別に関係なく優秀な人材を確保できる点や
多様な人材が活躍できる環境を整えることで
新たな価値の創造や企業イメージ向上にもつながります。
では、働きたいと思っている女性を採用するには
具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。
◇具体例
<女性の積極的採用>
通常、求人広告において「女性歓迎」や「女性のみに適用されるメリット」は
男女差別に当たるので表記することはできません。
しかし、女性の職場進出が進んでいるとはいえ
男女比率の差が大きい業種や職種も存在しており、
募集する職種の女性比率が4割以下の場合
ポジティブ・アクション募集であることを表記すれば
「女性を優先的に取り扱う措置」の表記が可能です。
参考:厚生労働省「女性労働者についての措置に関する特例(第8条)」
求人広告例
以下、ポジティブ・アクション募集の
具体的な事例をご紹介します。
<求人広告におけるポジティブ・アクション募集>
[例]
① 営業職(総合職採用)
男性10名、事務職(一般職採用)が女性3名の企業の場合
⇒営業職募集でのポジティブ・アクション「OK」
⇒事務職募集でのポジティブ・アクション「NG」
② 営業職(総合職採用)
男性18名、女性12名の企業の場合
⇒営業職募集でのポジティブ・アクション「OK」
③ 営業職(総合職採用)
男性9名、女性7名の企業の場合
⇒営業職募集でのポジティブ・アクション「NG」
[例]
タクシー会社
ドライバー:男性50名・女性1名/事務職:女性3名
⇒ドライバー募集でのポジティブ・アクション「OK」
⇒事務職募集でのポジティブ・アクション「NG」
<原稿表記例>
(OK)
「女性歓迎!【ポジティブ・アクション募集】」
「女性用パウダールーム完備【ポジティブ・アクション募集】」
(NG)
「女性歓迎。女性のみ住宅手当アリ」
→住宅に関する待遇の差はNG
「主婦歓迎」
→女性の属性を指す表現はNG
また、女性活躍推進法に基づき
制度や設備が整っている事実があれば
女性が「働きやすい」「安心できる」旨を
表記することも可能です。
【表記可】
「産休・育休明けの復職サポート制度あり」
「女性のためのキャリアアップ制度あり」
「託児所があるので女性も活躍できます」
【表記不可】
「託児所があるので女性も歓迎します」
※制度や環境の事実を記載していても
片方の性に訴求する表現は不可
あくまでもポジティブ・アクションの目的は
男女格差の是正のため、
単純に女性を採用したい…女性を優遇したい…など、
雇用における男女の均等な機会・待遇の確保を
目的としていないとされる場合は
違法となりますのでご注意ください。
また、「男性は体育会系出身のみ」
「女性は未婚者を優先する」など、
男女で異なる選考基準がある場合も
男女雇用機会均等法違反になる可能性があります。
個々の能力に基づいた公正な採用選考になるよう、
まずは男女同一の選考基準を定めることが必要です。
面接等の選考の体制にも問題がないか見直しをしましょう。
<ポイントまとめ>
OK条件
・募集したい職種の女性比率が4割以下
(※企業全体ではなく”職種”における比率)
NG例
・募集、採用の対象から男女のいずれかを排除する
・募集、採用にあたって男女のいずれかを優先する
・選考の段階で男女の構成比を考慮して
性別により選考基準を厳しくする
など
企業に求められること
ポジティブ・アクションの導入にあたって重要となるのが
企業経営者による意思決定を行うことです。
そもそも男女格差背景として、
長年企業にある性別による固定概念や
組織体制に課題があることが考えられます。
それらの価値観を変革し、企業の経営戦略の一つ
と認識して、能力と意欲のある女性に
一層の活躍の機会を創出することに取り組む方針を
明確に打ち出すことが第一歩となります。
女性の職域拡大、管理職への登用
国として積極的な女性管理職の推進も行われる中、企業でも女性管理職比率の向上に
取り組む必要があります。
総合職・一般職といったコース別雇用管理の場合は
転換を柔軟に行える制度に見直すことや
男女関係なく昇進・昇格の機会を
均等に与えられるようにすることで、
能力のある女性の意欲の向上にもつながります。
また、女性の少ない職種や役職に
いきなり採用・異動させることは
労働者にとっての負荷にもなりえますので、
研修制度を整えるなどの環境づくりも重要です。
取り組む際の注意点
・企業全体で組織的に一丸となって取り組む
・企業の制度や体制、社内風土などを見直し整備する
・男女労働者の間に生じている差の現状を分析し
取組目標を決める
・長期的な視野で実施し、効果確認や、
必要に応じて計画の見直しなど
PDCAを回しながら良い方向へ近づける
まとめ
男女雇用機会均等法により、
かつては男性の領域と言われていた場所にも
女性がチャレンジできたり
能力を発揮できたりするようになりました。
話題になった「リケジョ(理系女子)」以外にも、
「ドボジョ(土木女子)」と呼ばれる
土木業界で働く女性も多く誕生しています。
また、9月27日は「女性ドライバーの日」とされていて
関連業界では企業の魅力をアピールするいい機会として
PRに取り組んでいる企業もあります。
人材不足に悩む今こそ、過去の固定概念を一掃し
新しい視点や価値観を取り入れることが
必要になっています。
そして職場環境の改善を行うことは、
人材不足解消だけでなく
今いる人材のモチベーションの向上にもつながります。
この機会にポジティブ・アクションを活用した女性雇用と
職場環境の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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